新しい漫画家デビューのカタチ

配達員「実は以前から出版社への持込みや新人まんが賞に投稿したものの、採用されなかった作品の中にも光る才能をもった作家がいるんじゃないかっていう疑問があったんだけどどう思う?]

ポスト「どういうこと!?」

配達員「たとえば、ある新人まんが賞に応募総数128作品の投稿があって、そのうち5作品が入賞に輝いたとして、選外になった他の123作品は本当におもしろくないのかな?

ひょっとしたらおもしろい作品もあるかもしれないし、編集者の目だけでなくて、たくさんの読者に見てもらうことで今までにない新しい漫画が生まれる可能性はないかな?」

まんが賞入賞と選外

 

ポスト「でもプロの編集者や漫画家の先生が審査してるんだから、やっぱりおもしろくないんじゃない!?」


配達員
「考えてみてよ。雑誌は月刊にしろ週刊にしろページ数に制限があるだろ。300ページとか400ページとか。そしてほとんどのページは人気のあるプロの先生達がしめていて、新人作家が作品を載せられるスペースっていうのはそんなにはないんだ。

入選や佳作をとると本誌より部数の少ない姉妹雑誌の月刊誌なんかに1作品、2作品掲載されたりするけど、本誌には固定の読者をもった人気のある先生達が執筆していて、売れるかどうかわからない新人の作品を掲載する枠は少ない。」

ポスト「ケチだなぁ。10人くらいまとめて載せてよ!」

配達員「気持ちはわかるけどそりゃ無理だよ。仮に新人まんが家の20ページの作品を掲載するとして、発行部数が100万部だとしたら全部で何ページになると思う?」

ポスト「えっと・・・もじもじ・・・」

配達員「週刊少年マガジンの森田編集長は、以前こんなふうに語ってるんだ。

『20ページくらいの作品を1回掲載するのに、紙や印刷代の原価費用として300万円くらいかかっているんですよ。だからそれに見合うものを出していかないとダメだと思っているんです。』

【参照元】インタビュー ニッポンの編集長より
https://www.fujisan.co.jp/interview/shonenmagazine/


ポスト
300万円!?

配達員「そう。そんな大変なコストをかけてるんだから当然

『これは絶対おもしろい!絶対にいける!』とか
『雑誌の発行部数や売り上げを上げてくれるにちがいない!』とか
『今の流行や少し先の流行にマッチしていて読者にうけそうだ!』とか
『過去のデータからヒットする傾向がある漫画だ!』とか
『こんなの見たことない!今までにない新しい漫画だ!』とか
とにかく編集者はそんなワクワクするような作品を待っている。

だから漫画としておもしろいだけでなく、商業誌としての視点で作品をシビヤな目で見る。売れることが大前提になる。当然だよね。コストを上回る利益を回収できなければムダ紙を配ってることになるもん。

そして、新人作家はこの限りある誌面売れる漫画という高いハードルをめざして全国の漫画家志望者と競争することになる。まんが賞に入選してもなかなか本誌デビューにいきつかないケースもあるみたいだけど、定期的にでる入賞者の中で、本誌掲載というさらに狭い枠をめぐって競争があるからなんだ。これがいかに狭き門だかわかるよね。」

ポスト「どんどん嫌な話になってきたけど、採用されなかった作品の中にも光る才能をもった作家がいるって話はどこへいったの?」

配達員「そうだった。

投稿や持込みから漫画雑誌に掲載されてデビューするいままでのやり方は、漫画家になる一番の近道であることには違いないんだけど、掲載誌面があまりに少ないために漫画家志望者の数と天秤にかけた場合に、実は才能があってももれちゃってデビューできない人もいるんじゃないかなって思ったんだ。こういう人達がもっと世の中にでてこないのは大きな損失だし、まんが業界をもっと盛り上げる力になるにちがいないんだ。

『まんがが売れない!?』の中でも話したけど、まんが雑誌が売れない昨今の状況のなか可能性のある新人作家の作品をたくさん載せたくてもますます難しくなってきてる。

さらに、出版業界は多くの雑誌や単行本をたくさんの人に買ってもらってはじめて成り立つ商売なんだ。つまり採用の基準は大衆を読者とする、あるいはより多くの読者にうけるおもしろい漫画が優先される。でも、漫画のおもしろさっていろんなものがあっていいよね。

出版社やまんが編集部は即戦力の新人漫画家をプロに仕上げるけど、一定レベルにない作家の成長を待ってる余裕はないんだ。でも、一流のプロの先生といえども、読者アンケートや編集者との試行錯誤の中で作家としての成長をとげてヒット作を生み出している。選外の作家の中にも適切なアドバイスや経験を経ること で大きく成長する作家もいるはずなんだ。

そもそも、編集者が選ぶ漫画が必ずしも読者がおもしろいという漫画とは限らない。まんが賞や持ち込みの場合、選ぶのは少人数の審査委員、持込みの場合は一人の編集者の感性に頼ることになり、必ず拾い上げられるとは限らない。この作品はいけるとか、いけないとか、いろんな観点から判断するけど結果的に3割あたればいいところだって編集者自身も認めてるところなんだ。」

ポスト「じゃあ、漫画家志望者はどうすればいいの?」

配達員「持込みや投稿を一番大事にしつつも、別の新しい漫画家デビューのカタチを試していくことが大事だと思うんだ。」(WEB漫画や電子書籍で漫画家デビューするための7つの秘訣につづく)

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