配達員「ねえ、まんがポスト。このブログで一番最初に書いたまんがが売れない!?って記事のこと覚えてる?」
ポスト「もちろん覚えてるよ。漫画雑誌の発行部数が毎年どころか毎月のように落ち込んでいて、このまま出版業界の縮小がつづけば、ボクたち漫画家志望者のデビューする雑誌がなくなっちゃうって話だったよね。」
配達員「そうそう。そしてそのときに紹介したのが下の表。少年誌3誌と児童誌1誌の2008年から2012年の一号あたりの平均印刷部数の変化だ。
配達員「左から右に部数の変化を見てみて
どの雑誌も毎年ジワジワと部数が下がっている。
実はこれ、ボクが少年時代に愛読していた
少年誌Aは『週間少年ジャンプ』
少年誌Bは『週間少年マガジン』
少年誌Cは『週刊少年サンデー』
児童誌Dは『コロコロコミック』
だったんだ。」
ポスト「最盛期は600万部をこえていた『週刊少年ジャンプ』が200万部台になってるのもショックだったよね・・・。」
配達員「そうだね。
でも2014年、このなかの一誌だけ、部数が急上昇している漫画雑誌があるんだよ。」
ポスト「えーっ!!どの雑誌!?どの雑誌!?」
配達員「まんがが売れない、雑誌が売れないのは少子化の問題や、ゲームやネットなど娯楽の多様化、電子出版など、時代のながれもあってしょうがないと思っていた。
でもそうじゃない。良質なコンテンツさえつくれば、爆発的なヒットを生み出すことはできるんだ。」
コロコロコミックの2014年9月号が100万部を突破!!
配達員「発行部数が急上昇した雑誌は『コロコロコミック』!そしてそれに貢献してるのが、もうみんな知ってる『妖怪ウォッチ』!!」
ポスト「コロコロコミックおめでと~!!」
配達員「下の表を見てみて。今度はさっきの表のつづき。2013年から2014年までの一号あたりの平均印刷部数の変化だ。
上の3誌は悲しいことに、ひきつづき部数を下げている。
コロコロコミックの7〜9月期は56万部にまでさがっていた部数が、『妖怪ウォッチ』の連載がはじまって急上昇してるのがわかる。
そして2014年9月号で、100万部を突破したことが報じられているんだ。
上の折れ線グラフは部数の伸びをわかりやすくしたもの。いかに急激な伸びかがわかるでしょ。」
ポスト「おそるべし『妖怪ウォッチ』!!」
配達員「有名少年誌が、のきなみ発行部数を下げているなか、『妖怪ウォッチ』はなぜコロコロコミックの部数を倍近くも伸ばすことができたんだろう?なにか特別なヒットの仕掛けがあったのだろうか?」
『妖怪ウォッチ』のヒットの仕掛け”クロスメディア戦略”は、ボクたちの役には立たない
『妖怪ウォッチ』 レベルファイブ (監修),小西紀行 (著)<小学館>
『妖怪ウォッチ』はゲームソフト開発会社LEVEL-5 Inc.により2013年7月に発売されたニンテンドー3DS専用RPGゲームソフト。
主人公が妖怪ウィスパーと出会い、妖怪を見ることができる”妖怪ウォッチ”を手に入れるところから物語が始まる。さまざまな日常的なエピソードを通して、妖怪をみつけだし、バトルをすると友達になることができる。友達になった妖怪たちと助け合いながら、ボス妖怪を倒していくというストーリー。このゲームの世界観をまんが(小学館『コロコロコミック』『ちゃお』)、アニメ(テレビ東京)、玩具(バンダイ)などに展開し(クロスメディア戦略といわれている)、大人気になった。
関連グッズのひとつ”妖怪メダル”は爆発的人気商品となり、品薄、欠品が続き、それが報道されたことで、社会的にその人気を知らしめることになった。
ポスト「特別なヒットの仕掛けならボク知ってるよ!クロスメディア戦略っていうんだ。
今までは、漫画の原作がまず先にあって、人気がでたらアニメ化されて、その後、おもちゃやゲームができるって流れだったでしょ。
でも『妖怪ウォッチ』はもともとはゲームがはじまりだけど、漫画も描いて、アニメも制作して、おもちゃもつくるといったことを複数のメディアでほぼ同時にやったんだ。これによってゲームには興味がないけど漫画やアニメは見る、漫画やアニメは見ないけどゲームやおもちゃは欲しいという人に対してもとりこぼすことなくアピールでき、全体としてブームをおこすことで爆発的な大ヒットにつなげたんだ。
だけどクロスメディアはボクたち平凡まんが家志望者の役にはたたないよ。だって、テレビや雑誌、おもちゃメーカと契約して自分の作品をアピールするなんて、真似できるわけないからね。
もう一つ、コロコロコミックの9月号は、”限定妖怪メダル”ってそんじょそこらじゃ手に入らない付録がついてたんだって。だから漫画が読みたくて買った人ばかりじゃなくて、メダル目当てに買った人も多かったんだ。
以上のことから、コロコロコミックの販売部数の急上昇は、漫画の力とは言えないし、『妖怪ウォッチ』から学べることは何もありません!えっへん!!」
配達員「ちょっ、ちょっとまって。
ごもっともな意見だけど、ボクはクロスメディア戦略が『妖怪ウォッチ』の最大のヒットの仕掛けだなんて言うつもりはないんだ。
例えば、ボク ”まんが配達員” が主人公のゲームをつくったとしようよ。そのゲームの原作をもとに、漫画に展開したとして人気がでるだろうか?」
ポスト「きっと、人気でないね。」
配達員「例えば、君、”まんがポスト”の顔の表情を100カット用意して、”限定ポストメダル”と名づけて販売したとして、売れるだろうか?」
配達員「きっと、売れないよね!」
ポスト「そんないいかたひどいじゃないか・・・(泣)」
配達員「ごめんごめん。
ゲームの原作が先か漫画の原作が先か、複数のメディアで発信するかしないか、限定メダルを付録としてつけるか、つけないかというのは、販売戦略としては重要かもしれないけど、もともとのコンテンツに魅力がなければ効果がないんだ。
『妖怪ウォッチ』は、ゲームや漫画、アニメ、おもちゃという、複数のメディアを連動して訴求するクロスメディア戦略という手法で、爆発的ヒットになってるけど、メディアをこえて大きな視点でみつめてみると、その中心にちゃんと”良質なコンテンツ”があるんだ。中身のないコンテンツをどんなにクロスメディアしたってヒット作品は生まれないんだ。
そしてその”良質なコンテンツ”をつくれるかどうかが、ボクたちが漫画家になれるかどうかを決めるんだ。」
~漫画家ノートNo.7~
”良質なコンテンツ”づくりこそ漫画家への近道
『妖怪ウォッチ』は雑誌が売れないという出版不況のなかにあって、コロコロコミックの部数を倍近く伸ばすことができた。その理由の一つとしてクロスメディア戦略があるが、”良質なコンテンツ”なくしてどんな販売戦略も有効ではない。”良質なコンテンツ”は多くの人の心にひびき爆発的なヒットを生み出す。
ポスト「でも、”良質なコンテンツ”なんて意味わかんないよ。どうやって作ればいいの?」
配達員「そこがボクたちの一番知りたいところだよね。次回は、『妖怪ウォッチ』から、ボクたち凡人まんが家志望者でもまねのできる、”良質なコンテンツ”の作り方を調べてみようよ。いろいろ調べてみると、ヒットの裏には地道な作業が隠れていたよ。」
ポスト「最後まで読んでくれてありがとう。妖怪ウォッチOP「ゲラゲラポーのうた」で疲れをふっとばしてね!」