漫画家になるための地図『荒木飛呂彦の漫画術』

『ジョジョの奇妙な冒険』の作者荒木飛呂彦先生が漫画家になる方法を暴露した『荒木飛呂彦の漫画術』。週刊少年ジャンプのヒットの方程式をはじめ、時代をこえ愛され受け継がれる”王道漫画”を描く方法を誰もが実践できる方法論で気づかせてくれる。漫画家は才能がないとなれないと勘違いしているボクたち漫画家志望者に大きな勇気を与えてくれるんだ。

 

配達員「ボクの友人の漫画家志望者が、また一人漫画界を去ろうとしている・・・

小学校から漫画を描きはじめ、10代で漫画家を決意、20代には誰もが知る有名漫画家の先生のもとでアシスタント修行をはじめ、10年間がんばってきたんだけど、漫画家になることの難しさと子供が生まれたのを機に、夢をあきらめて就職すると言い出したんだ。」

ポスト「同じ漫画家志望者としてさびしい話だね。」

配達員「漫画家という職業はこうすればなれるという答えがない。10年20年商業誌に漫画を描いてるプロの先生たちは氷山の一角で、運よく漫画賞に入選しデビューできてもヒット作に恵まれず漫画界を去っていく人、何年がんばっても漫画賞をとれない、持ち込みをしても認められない、こんなふうに夢をあきらめる人たちが大勢いるんだ・・・

そんなときボクたちは、自分には才能がなかったんだ、自分の漫画は認められないんだとあきらめてしまいがちだ。

今回は、そんな友人に漫画界を去るまえに読んでほしい

『荒木飛呂彦の漫画術』という本を紹介するよ。」

ポスト「それは『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木先生が漫画家になる方法を暴露したってウワサの漫画家になるためのハウツー本じゃないか!!」

配達員「荒木先生はこの本のなかで、漫画家になるための地図”王道漫画”を描く”黄金の道”をあかしている。」

ポスト”王道漫画”を描く”黄金の道”!?

黄金ってことは漫画を描いてお金持ちになる方法を教えてくれるんだね!!!うしししし・・・ヨダレ」

配達員「バカだなあ、そうじゃないよ。黄金の道っていうのは、時代をこえて愛され、受け継がれていく名作をうみだす道のことだよ。

荒木先生はプロとして通用する漫画の描き方を、才能という漠然とした基準ではなく、誰もが実践できる漫画術として解説している。

自分の漫画のどこをどうすればプロのレベルにもっていけるのか、商業誌で連載をもつには何が足りないのか、そして何より読者が喜んで読んでくれる漫画の描き方を誰もがつかえる方法論として気づかせてくれる

自分の才能を疑ったり、”漫画家は才能がないとなれない”と勘違いしているボクたち漫画家志望者に大きな勇気を与えてくれるんだ。

「週間少年ジャンプ」のヒットの方程式があきらかに

『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)荒木 飛呂彦 (著)

全く人気が衰えることなく長期連載が続く『ジョジョの奇妙な冒険』の作者、荒木飛呂彦。
「漫画は最強の『総合芸術』」と言い切る彼が、これまで明 かすことの無かった漫画の描き方、その秘密を、作品を題材にしながら披瀝する!
絵を描く際に必要な「美の黄金比」やキャラクター造型に必須の「身上調査書」、ヘミングウェイに学んだストーリー作りなど、具体的な方法論からその漫画術を明らかに!
これはある意味、マジシャンが手品の種を明かすようなところもあり、本当は隠しておきたい伝家の宝刀も含まれています。これまで独占してきたアイディアや方法論といった企業秘密を公にするのですから、僕にとっては、正直、不利益な本なのですが、それでも書くのは、それを補って余りあるほどの伝えたい思いがあるからです。

『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)荒木 飛呂彦 (著)「表紙」「はじめに」より引用

配達員「この本にのっていることすべてを伝えることはできないけど、”黄金の道”のひとつストーリー作りの鉄則として”プラスとマイナスの法則”というのが紹介されているので引用したい。」

まずゼロの線があるとして、そこを基点に、主人公の気持ちや置かれている状況が上がっているか、下がっているかを考えてみます。・・中略・・・特に少年漫画は、常にプラス、プラス、プラス・・・とひたすらプラスを積み重ねて、どんどん上がっていく、これがヒットするための絶対条件です。

ヒットの法則

『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)荒木 飛呂彦 (著)「第四章 ストーリーの作り方」より引用

配達員「ページをめくるたび主人公は次々にパワーアップした困難に見舞われるけれども、その都度勝っていき、”次は負けるのかな”と思わせるほどの状況に陥っても、最後は必ず勝つ。そのプラスを積み重ねていく部分のアイディアをどうするか、これがストーリー作りのカナメと語られている。

(”勝つ””負ける”というのはバトル漫画にかぎらない、恋愛ものなら試練や告白、スポーツなら試合、ヒューマンドラマなら人間関係などにおきかえられる。)

実際に先生はジャンプで、1ヵ月近くにわたって主人公がマイナス局面におちいる話を描いたそうだ。案の定、読者アンケートの人気はよくなくて、「この後、プラスになるので待っていてください」と念じながら描いていたそうだよ。

”この主人公負けてばっかりじゃないか” ”負け続けの主人公なんかみたくない”と読者が思っていることがわかっていたんだね。

そして、このどんどんプラスが積み上がっていく状態を作り出すために、1980年代の週間少年ジャンプの漫画家たちが考えだしたのが、”トーナメント制”だったそうだ。」

トーナメント方式のように、一回戦、二回戦、三回戦……と順々に勝ち上がってきた敵と戦っていくわけですが、最後、頂点に立つまで必ず「上がって」いくことを読者も予想できます。『キン肉マン」や「ドラゴンボール」が代表的な作品ですが、トーナメント制にすれば、ヒット間違いなし、という手堅いストーリーになるわけです。

『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)荒木 飛呂彦 (著)「第四章 ストーリーの作り方」より引用

ポスト「なるほど~。トーナメント制といえば、『幽☆遊☆白書』や『スラムダンク』、『テニスの王子様』・・・がパッと思いうかぶけど、ボクの大好きな『北斗の拳』も、ラオウを頂点として次々とあらわれる敵を倒していくという点ではトーナメント制といえるし、探せばほかにもいっぱいでてきそうだ。

でも”トーナメント制”ばかりだと似たような作品ばかり増えて、今までにない新しい漫画が生まれてこないんじゃない?」

配達員「その危険性はあるよね。ただ『ドラゴンボール』と『スラムダンク』が同じ漫画だと感じないように、作家がそれをどう表現するかによって、まったく違う作品になると思うんだ。

ただこの話で先生が一番伝えたかったのは・・・」

ポスト「プラスが積み上がるなら”トーナメント制”でなくてもいいってことだね。」

配達員「そのとおり!今までにない新しい表現でプラスを積み上げることが”黄金の道”で、それがボクたちが考えることなんだ。

荒木先生は書いてあることと同じ事をしないでほしいと言ってる。”黄金の道”を土台にして、新しい漫画を描いてほしいと願ってるんだ。

数学家や科学者は過去に証明されている方程式について人生をかけてはじめから解き明かそうとしない。それを基礎にして新しい発見に人生をかけるんだ。」

次世代の漫画家志望者に期待する荒木先生

配達員「荒木先生はこの本を出した理由として初代担当編集者の定年と漫画界への感謝をあげている。」

二〇一五年四月。僕が一八歳のころに集英社の『週刊少年ジャンプ」編集部へ漫画原稿を持ち込んだときに出会った初代の担当編集者が、定年退職を迎えました。感謝の気持ちを示すためには「種明かし」もいいかな・・・というか・・・いや・・・今まで経験し、学ばせてもらった「漫画の描き方」の「正道」を書いておく必要があると強く思ったのです。

『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)荒木 飛呂彦 (著)「おわりに」より引用

配達員「この本を読んで、荒木先生は本当は今の漫画業界を心配しているんじゃないかと感じたんだ。つい最近、『週間少年サンデー』の印刷部数が40万部を下回ったことが報道された。

(参考サイト:https://www.itmedia.co.jp /news/articles/1504/27/news132.html)

サンデーだけじゃない、ジャンプもマガジンも毎月という短い期間で発行部数が落ちていて、出版社を中心とした漫画業界はどんどん縮小している。

漫画家志望者が減り、漫画の質そのものが下がっているのかもしれない。」

「黄金の道」はまた、迷ったときに見る地図のようなものかもしれません。・・中略・・・でも、地図も基本的な知識も持たず山に登ったら、むやみにあちこち歩き回ることになります。その場合、頂上にたどり着く確率は非常に低くなりますし、道を外れたままで戻れなくなってしまうことや、時には遭難してしまう危険もあるのです。
この本に書かれている「黄金の道」は、「王道漫画」という頂上にたどり着く道標となるでしょう。しかし、「地図」も何もないところでは、何が正しいかもわからず、漫画という峰の頂のはるか下で挫折することになってしまいますし、実際、そうした様々な例を見聞きしてきました。
これから漫画を描こうと思う人々に、そうした不幸を味わってほしくはありません。

『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)荒木 飛呂彦 (著)「はじめに」より引用

ポスト(妄想)荒木先生が30年かけてあみだした漫画術で、ライバルの配達員に差をつけてボクが一番はじめにデビューだ!うしし!!・・・ヨダレ」

あ!でもボク夢中になってるゲームがあったんだ!それが終わってからにしよう。」

配達員おい!(怒)

君は他人がつくりだした娯楽におぼれ漫画家をあきらめる側になりたいのかい。それとも半年後、一年後に自分のつくった作品で人を楽しませる幸せをつかむのかい。」

ポスト「そりゃもちろん・・・」

配達員”持ち込みのとき編集者をどう惹きつけるか”

”ヒットする漫画の絵の条件”

”人気キャラクターはなぜ人気なのか”

この本には君がのどから手がでるほど知りたいノウハウがつまってる。」

配達員やるなら!

ポスト今でしょ!!もう古いね。

『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)荒木 飛呂彦 (著)

この本は、いわば僕にとって漫画界への恩返しのようなもので、今まで学んできた「漫画の王道」を次の世代に伝えることによって、これまでの漫画を超 えるような作品が生まれてきてほしいと願っています。これからの漫画界の繁栄につながってくれるのであれば、それにまさる喜びはありません。

『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)荒木 飛呂彦 (著)「はじめに」より引用

<目次>
はじめに
なぜこの本を書くのか/
「王道漫画」を描くための「黄金の道」/
「地図」を携えて「王道」を進め/漫画家が見失ってはいけないこと/
『ジョジョ」は「王道漫画」である
第一章 導入の描き方
ゆでたまご先生と自分の違い/原稿を見もせず袋に戻す編集者/
最初の一ぺージをめくらせろ!/
最初の一ページをどう描くか②読みたくなるタイトルを探せ!/
最初の一ページをどう描くか③いいセリフとは/
一コマ日は「5W1H」が基本/複数の情報を同時に示す/
最初の一ページは漫画の「予告」/
他人が描いていない分野に踏み込む/
最初の一ページはこう描く!:デビュー作「武装ポーカー」/
最後まで読ませるには
第二章 押さえておきたい漫面の「基本四大構造」
これが漫画の「基本四大構造」だ/
欠かせないものは「キャラクター」と「世界観」/
「基本四大構造」のバランスをとる/ヒット作を分析する習慣
第三章 キャラクターの作り方
第四章 ストーリーの作り方
第五章 絵がすべてを表現する
第六章 漫画の「世界観」とは何か
第七章 すべての要素は「テーマ」につながる
実践編その1 漫画ができるまで アイディア、ネーム、コマ割りの方法
実践編その2 短編の描き方 「富豪村」(『岸部露伴は動かない』)を例に
おわりに

『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)荒木 飛呂彦 (著)「目次」より引用

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